

やる前から考えても無駄
株式会社ファーストリテイリング 代表取締役会長 柳井 正
―早速ですが、柳井さんは小さい頃、どんな少年だったのですか。
―商売にあまり良いイメージは持っていなかったんですか。
またうちの親父は紳士服店以外にも土建屋をやったりと、いろんな商売をしていました。政治も好きで、国会議員の後援会長もしていた。地方の商売なんで、政治的な面でいろんな物事が決まったりするんです。要は人間関係なんです。そういった政治的な人間関係にも反発心がありましたね。だから自分で商売をしようと思った時も、親父とは違うやり方で商売をしたいと思った。
―大学時代の将来の夢は何だったんですか。
―就職活動は、どのようにしていたんですか。
―実際ジャスコに入社してみて、どうでしたか。
―会社に合わなかったんですか。

―ジャスコを辞めて、すぐに実家に戻ったんですか。
実家に戻ってからは、親父がやっていた紳士服専門店を手伝いました。でも手伝いながら、愕然としたんです。ジャスコで働いた時と全然違う。仕事の効率も悪いし、従業員も真面目に働いていない。この違いは何なんだって。それで、ああでもない、こうでもないって店員に言いまくったんです。そしたら、一人を残して七人いた店員がみんな辞めちゃった。その当時は現場の人の気持ちなんて考えていなかった。若気の至りですね。
それで店員がいなくなったんで、自分で全てをやらなくちゃいけない。仕入れ、販売、経理、人事を全部自分でしました。親父も会社の実印を僕に渡して、「好きにやれ」って言う。僕はまだ20代の若造でしたが、一気に責任を負うことになったんです。でもそれが結果として非常に良かった。全部自分でしないといけないから、商売人としてすごく勉強になった。それに、やってみたら、商売って結構面白いんだな、と気が付いた。毎日、成績表をもらっているようなものでしょう。やったことが全部、自分に返ってくる。そこで初めて、自分で商売をやっていこうと決心したんです。
―その当時はどれくらい働いていたんですか。
―その当時、将来の夢は何か持っていましたか。
―いつくらいから全国展開を目指し始めたんですか。
―経営の原理原則とは何ですか。
また商売では甘い考えは通用しません。まず商品を買いに来るお客さんは非常にシビアです。自分のお金を商品と交換するわけですから、とても厳しい目で見てくる。またその店で働く従業員もシビアです。自分の大事な時間を使って、お金をもらいにくるわけですから、これもまた厳しい目で見てきます。
そんな中、経営者は誰にでも納得できる形で経営しないといけない。でも最初からうまくはいきません。何回も失敗してみて、失敗の原因が自分の中にあるんじゃないかと気付かないといけない。そうやって、自分を成長させていくんです。
―柳井さんも失敗をしてきたんですか。
―人から信用されるために他に大事なことはありますか。

―柳井さんが経営者として、いちばん辛いことは何ですか。
―話は変わりますが、起業家を目指す若者についてどう思いますか。
柳井:僕はベンチャービジネスをやろうって人が嫌いなんですよ。ベンチャーをやろうっていう人は、人を測る尺度がお金な感じがして嫌いなんです。どこかプンプンとお金の匂いがする。お金の匂いのする人に、あまりいい人はいません。
起業家を目指すんだったら、まず会社を興すことを考えるんじゃなくて、一生自分がやり続けられることを見つけるのが大切です。また、やると決めたら、とことんやる。日本のベンチャー企業は規模が比較的小さい。何十億とか何百億とかでは満足せずに、行き着くところまで行こうっていう風に思ってほしい。
20代や30代でたまたま運良く上場して、キャピタルゲインで儲けても全く意味がない。そんなものに存在価値なんてないし、評価に値しないと思う。そういう人にはなって欲しくないです。また起業しようとする時に、テクニックに走って、MBAのビジネススクールに通ったり、欧米の経営学者の書いた本を読み漁るのも良くない。そういう本を読む前に、本田宗一郎や松下幸之助のような偉大な経営者の本を読んだ方がよっぽどいい。経営の本質、ビジネスの本質、社会の本質がその中に書いてある。本当に勉強になると思います。
―会社を興すことばかり考えずに、まずは自分が何をしたいのかを真剣に考えるべきだということですね。
柳井:そう、まずは使命感を持ってやれることを探して欲しい。起業するというのは、とても責任が重大です。だから安易に考えるのではなく、20代で起業しても、それが40代、50代まで続けることができるかどうか。ただ単に金儲けが目的だと継続していくことはできません。自分が主体的になって、使命感を持って起業する。そうすれば、商売に対する誠実さや職業的良心が芽生え、人に信用される基盤ができると思います。
それと日本ではもっと若い人が商売や経営の表舞台に出て、企業のトップとして活躍するべきです。今の日本経済を見ていたら、老害が出てきていると思います。日本では老人が頑張りすぎですよ。逆を言えば、若い人が頑張っていない。もっと若い人が頑張らないといけない。現在の日本はすごいピンチな状態です。だからこそ、若い人にとってはチャンスなんです。若い人には日本を変えるような新しい産業を興してほしいです。ビジネスチャンスはいくらでもあります。自分で商売をしてみて、自分の可能性を自分で開発してもらいたい。商売をするのは早ければ早いほどいい。サラリーマンよりも自分で商売した方がいいですよ。絶対に。
―なぜサラリーマンよりも、自分で商売をした方がいいんですか。
―最後に、これから実家の会社を継ぐ人にアドバイスを下さい。
設立 | 1963年5月 |
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資本金 | 10億円 |
売上高 | 5,381億円 (2009年8月期:2008年9月1日〜2009年8月31日) |
従業員数 | 4,652名 |
事業内容 | 商品企画・生産・物流・販売までの自社一貫コントロールにより、 高品質・低価格のカジュアルブランド『ユニクロ』を提供する製造小売業(SPA) |
URL | http://www.uniqlo.co.jp |
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