

10年後の変化を予測し、世の中の本質を見極める
リクルート出身のITベンチャー社長
株式会社オールアバウト 代表取締役社長 江幡 哲也
リクルートで次々と新規事業を立ち上げ、オールアバウトを起業した江幡哲也。彼は、10年前に10年後の世の中の変化を予想し、その変化の本質を見極め、 5年前に事業を興した。最初の2年は、社会に理解されず売上げも伸びなかったが、江幡の想いがブレることはなかった。来たるべき未来を見つめ、本質的に正しいことをしているという自信があったのだ。10年後、彼の予想は現実となり、今年オールアバウトはジャスダック市場に上場。しかし、これも彼にとってはただの通過点に過ぎず、彼は世の中の変化を自らで加速させていっている。
※下記はベンチャー通信16号(2005年12月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
―まず、簡単に御社の事業内容を教えてください。
江幡:インターネット上で専門家がガイドする総合情報サイト「All About」を運営しています。300を越えるテーマでその道のプロである専門家が、自分のプロフィールを公開して、信頼できる情報を提供したりナビゲートを行う総合情報サイトになります。今では、月間に約 1,200万人の方に利用していただいています。
―大学卒業後、リクルートに入社された理由って何ですか?
江幡:リクルートなら、普通の会社の2倍、3倍の経験ができると思ったからです。と言うのも、私の父が中小企業の経営者で、父が引退したら後を継がなくてはならないかもしれないと思っていた。父が60才のときに、私は35才になる。そう考えたら、ビジネスマンとしては10年ぐらいしか期間がない。だから、短期間でいろいろな経験ができそうなリクルートを選びました。
―リクルートに入ってみて、どうでしたか?
江幡:周りが向上心の高い優秀な人ばかりだったので、最初は不安でしたね(笑)。しかし、そんな中、最初から情報通信系の新規事業に関われたのは大きかったですね。新規事業ですから、先輩も新人も経験に差がなく、いろいろな仕事を任せてもらえました。しかも、情報通信系の事業でしたから、仕事の経験を培うとともにITの素養も身につけることができました。その後、FNXというFAXネットワーク事業で営業を経験したことも大きかったですね。様々な業界、企業に対して営業をする中で「なんて世の中って不便なのだろう、不条理なのだろう」という感情を強く持てましたから。そのような意味で、リクルートでの経験は、現在の自分の力のベースを作ったと言えますね。

―オールアバウトの起業のきっかけを教えてください。
江幡:リクルートでは、会社の事業として、いろいろな新規事業を立ち上げたのですが、オールアバウトもその中の1つでした。私にとっては6つ目の新規事業です。もともと構想自体は、10年ぐらい前からありました。10年前に、10年後の未来、つまり現在の時代がどうなっているかを予測していました。環境としては、インターネットは普及して、ブロードバンド化も進んで、パソコンの値段は下がって、携帯化も進むだろうって。さらに、これらの環境変化により、非常に大きく変わる点が2つあると思っていました。1つは消費者が賢くなる。これまで入手できなかった情報も取れるようになって、知恵が付く。もう1つは、情報発信が簡単になり、情報を発信する消費者が増える。そういう風に変わるときに、どういうビジネスチャンスがあるかを想像した結果、今のオールアバウトの事業を思いついたのです。その後、99年に、アメリカのアバウトドットコムという会社が、ナスダックに上場したことを偶然知りました。私の考えていたことと同じコンセプトでサービスをしていたので、すぐにアメリカに飛んで向こうのCEOに交渉したんです。「競合するか一緒にやるかどっちだ?」って(笑)。「じゃあジョイントベンチャーでやろう!」ということになり、アバウトドットコムとリクルートの提携という形でオールアバウトを設立し、自ら社長に就任しました。
―創業当時は、どんな感じだったんですか?
江幡:オールアバウトは2000年6月の設立。ちょうどネットバブルが崩壊した頃でしたから、「こんな手間のかかるビジネス、本当にうまくいくのか?」と言う声が圧倒的でしたね。でも、本質的に正しい事業をしていると思っていましたから、気持ちはブレなかったですね。流行に流されることなく、本質的な価値を提供するために、地に足をつけて、しっかりと積み上げれば良いと思っていましたから。IT業界は、変化が激しく、新しいことが次々と生まれますよね。だから、経営の仕方として、うまくいくかは分からないけど、いろいろなことに手をつけて、どれかが成功すれば良いという手法もあると思います。しかし、私は、そうではない、環境の変化に合わせて本質的な価値を目指してしっかりと積み上げていくことが大事だと思っています。
―事業のほうは、最初からうまくいったんですか?
江幡:最初の2年ぐらいは、売上げが伸びませんでしたね。ネットバブルが崩壊して、ネットに広告をなかなか出してもらえない時代でしたし、オールアバウトが得意なのは、当時一般的だったバナー広告ではなく編集型の記事広告ですから、営業に行ってもほとんど理解してもらえませんでした。最初はお客さんへの啓蒙活動をしていたようなものですね。でも、自分たちは本質的に価値のある、いずれ必要とされる商品を提供していると思っていましたから、理解さえしてもらえれば大丈夫だという自信はありました。あとは来たるべき未来をいかに前倒しして実現できるか。これが、私たちの仕事だと思って必死に頑張っていましたね。
―オールアバウトの今後のビジョンを教えてください。
江幡:企業にはもともと、ビジネス的意義と社会的意義という2つの存在理由があると思っています。オールアバウトのビジネス的意義は、‘こだわり消費’においてナンバー1企業になることです。消費者は、情報収集が簡単になったことでドンドン賢くなり、消費に‘こだわり’ を持つようになってきています。そこで、消費者のこだわりを満たすような情報やサービスを提供することで、この‘こだわり消費’への流れを推進するとともに、‘こだわり消費’の世界でナンバーワンになりたいと思います。次に、オールアバウトの社会的意義は、個人を豊かにすることで社会を元気にすることです。今までの日本は、国や大企業が情報を独占していて、個人には十分に情報が伝わっていませんでした。個人が豊かでなければ社会は元気にならない。私たちの情報提供を通して、個人が豊かに生きるための機会づくりができればと思っています。オールアバウトを通して、ITや情報を通して「世直し」ができればいいですよね。まあ‘青臭い’話ですけどね(笑)。

PROFILE プロフィール
江幡 哲也(えばた てつや)プロフィール
1965年神奈川県生まれ。87年武蔵工業大学工学部卒業後、リクルートに入社。FAXネットワーク事業の「FNX」や、インターネット上のone to oneマーケティングメディア「キーマンズネット」など、社内でいくつかの新規事業を立ち上げる。その後、2000年に米国About.Inc社とのジョイントベンチャーとしてオールアバウトを設立。代表取締役社長に就任する。
企業情報
設立 | 2000年6月 |
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資本金 | 11億4,100万円 (2007年6月末現在) |
売上高 | 46億7,400万円 (2008年3月期実績) |
従業員数 | 196名 (2007年6月末現在) |
事業内容 | 専門ガイドによる総合情報サイトの運営 ・インターネット広告事業 ・オンラインショッピング事業 ・専門家マッチング事業 ・情報誌事業 |
URL | http://corp.allabout.co.jp |
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